成年後見人の横領事件
皆さん、こんにちは。
今回は珍しく刑事事件について、取り上げようと思います。
行政書士は仕事柄、刑事事件に係わることは、余りないです。告訴状作成くらいでしょうか。
成年後見人が、成年被後見人の預金などを横領して、逮捕されました、というニュースは、新聞等でたまに見られます。非常に残念なことですが、成年被後見人の預金等が手元に自由に出し入れできてしまうので、いけない考えが出てしまうのでしょう。
さて、成年後見人が成年被後見人の財産をとってしまう行為は、業務上横領罪(刑法253条)に該当します。
成年後見人という業務をする上で、自分の占有する成年被後見人の財産を横領するので、業務上横領罪になります。
この成年後見人と成年被後見人が親族だった場合はどうなるでしょうか?
子供が親の後見人になるということは、よくあることですね。
なぜ、このような問題提起をするかというと、刑法244条があるからです。
刑法244条は、簡単に言うと、家族の間で、窃盗や横領を行っても刑は免除します、ということが規定されています。
こんな、規定初めて知ったという方も多いのではないでしょうか。
これは、「法は家庭に入らず」というように、家庭内の紛争には国家が干渉しない方がよいという法政策に基づくものです。
この規定によると、成年後見人が子供で、成年被後見人が親だった場合、刑は免除されるのでしょうか?
答えは………免除されません!!!
成年後見人は家庭裁判所から選任されている(法定後見の場合)ので、刑法244条の適用(準用)はありません。
また、刑法244条1項所定の親族関係があることを、量刑上酌むべき事情として考慮するのは相当でない、とも最高裁はいっています(最高裁判所第二小法廷平成24年10月9日決定)。
要するに、成年後見人となった以上、親族という枠を出て、裁判所が絡んだお仕事ですよ、ということです。
もし、横領があった場合は、親族関係は考慮しません、ということです。
くれぐれも、横領などしないよう、法令順守をお願いします。
では。
行政書士名古屋森法務事務所
代表 行政書士 森 俊樹
« 相続の承認(単純承認) | 民法大改正 »